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Research on Researchat (2)

Researchat.fmのおすすめ回を紹介します。中編(ゲームのはなし)

はじめに

Researchat.fmのおすすめエピソード紹介シリーズ、前編の続き。

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前編で紹介した研究のおすすめ回に続いて、中編であるこの記事ではゲームに関連したエピソードを取り上げることとしたい。

TL;DR

  • ゲームのはなし:エピソード3, 34, 27, 84, 85をおすすめ

ゲームのはなし

Researchat.fmはその歴史上600個のタブとともに始まったとされているものの、しかしエピソード84(後述)の冒頭によれば、このEp.1とは試し録り回でエピソード2と3が真の初回であるとのこと。 Ep.2はCRISPRの話(バイオロジーの回だ)、そしてエピソード3はゲームの話であって、ポッドキャスト開始当初から研究とともにゲームを語る一面があったことが窺える。

エピソード3 (2019/03/07) では当時のEVO JAPAN 2019で話題となった鉄拳のシーンが紹介されている。 突如現れて大活躍したパキスタン勢の存在と、格闘ゲームにおける乱入時の表示メッセージがかけられたエピソードタイトルが秀逸。

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Arslan Ash選手のストーリーもさることながら、Show notesにあるウメハラ選手のコメンタリーは改めて見返してみても面白い。 動画で紹介されている『勝負論 ウメハラの流儀(小学館新書)』よりもさらに格ゲー色が強い『ウメハラコラム 拳の巻 -闘神がキミに授ける対戦格闘ゲーム術-』という本があるのだけど、2013年にこの本を買った当時は内容が理解できず、あまり面白さがわからなかった。 それから8年経った今ではこの本の面白さがわかってきて、なんならこの本がウメハラ選手の著書の中で1、2を争うレベルで面白いと思えるようになったのだけれど、その裏にはResearchatのゲーム回から学びを得たことがあるのかなと振り返っている。これが成長か…

中盤で出てくるサイエンスコミュニケーションの話題の中で「eスポーツのようにプレーヤー(人)にフォーカスした見せ方が研究にあっても良いのでは」という指摘があり、しかし昨今の研究者ポッドキャストや研究系VTuberを見ていると、発信者の個性の重要性を語るこの部分は示唆に富んでいる。 音声や動画といったそれらの媒体は、単に科学を伝えること以上に発信者(人)に重きを置いたコミュニケーションになっているわけで、そう考えると2019年時点でのこの指摘には思わず先見の明を感じさせられる。

ちなみにエピソードの締めに恒例のおすすめ漫画紹介はこの回から始まる。漫画のアウトプットがとりわけ際立つ回としてEp.64, 105, 106あたりがおすすめ。

エピソード3での鉄拳ストーリーがパワーアップして帰ってきたのがエピソード34 (2019/12/12) になる。 エピソード3に続いてtadasuさんがパキスタン勢のその後を解説する。

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eスポーツの格闘ゲームのシーンは今ではコミュニティ同士の戦いになっていて、強いコミュニティをいかに作っていくかという話題は研究コミュニティ形成の観点から眺めても興味深い。 COVID-19を経て研究活動もかなりの領域でオンライン化が進んだとはいえ、しかし学会や研究会などでのオフラインの交流も依然として重要なのかもしれないと思わされる。 コミュニティ同士で競争しつつも、時には協力していくことの大事さは途中で挟まる研究者のエピソードを聴くとほんわかと感じられる。 最近も少し話題になったかもしれないことわざ「早く行きたければ一人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め。」を思い出させてくれる。

エピソード3と34は鉄拳の話だったけど、エピソード27 (2019/10/14) ではSNK格闘ゲームが語られている。 coelaさんがとても詳しい。

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タイトルにあるバーンナックルとはこのエピソードの中心人物であるテリー・ボガードの必殺技。 テリー・ボガード餓狼伝説で初登場したのちザ・キング・オブ・ファイターズ (KOF) にも参戦し、そしてこのエピソードの時点でスマブラにも参戦が発表された。その詳しい解説の様子をかつてツイッターでつぶやいていた本業の空き時間に研究していく姿勢とは一体…?)

僕は当時のSNKというとメタルスラッグをひたすら遊んでいたので、KOFについてはあまり詳しくなく、そもそもKOFがオールスター的タイトルであることをこのエピソードで知った。 少し調べ直してみるとメタルスラッグからもKOFへの参戦があり、逆にKOFの怒チームの3人がメタルスラッグに逆参戦もしている(参照)。 当時もう少し興味の幅を拡げていれば良かったなと思う。

ひたすらゲームの話をしているエピソード27だけど、最後に少しだけCS論文読みポッドキャストMisreading Chatの話題が出てくる。 がんばってる人類として森田さんに紹介されてるのいいなあ…ちょっとCS寄りな話題のあったEp.82もよい。

鉄拳、SNKと来たらお次は…ということで、エピソード84と85 (ともに2020/12/20) ではそれぞれギルティギアストリートファイターの話題が出てくる。 coelaさんが語り明かしている。

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前述の2タイトルに限らず、Show notesに出てくるサムライスピリッツジョジョ、MARVEL、ジャスティス学園、ヴァンパイアシリーズ、そして編集後記にある月華の剣士(に出てくる響)も忘れてはいけない。 話があちこち飛んでなかなか前に進まない雑談の感覚が良い(前述のエピソード27でもその趣が感じられる)。

そのほかの格ゲーのタイトルとしてバーチャファイターEp.64グランブルーファンタジーヴァーサスはEp.64とエピソード109(後編で紹介)に登場する。 Show notesにある「キャラセレと研究テーマ … いつか話したいテーマ」の伏線は同じくエピソード109で回収される。

エピソード85ではストリートファイター5が上達するまでの体験談が語られていて、「聴くと格ゲーがうまくなる1ポッドキャスト」という新しいジャンルを開拓している。 エピソード109(後編で紹介)で言われているように、格闘ゲームは何をすれば上手くなるのかがよくわからない、参入障壁が非常に高いジャンルといえるけれども、このエピソードは一個人の体験談でありつつも、初心者帯にいた当時何を考えてどう行動したのかの記録には大いに助けられる(げんにGBVSで助けられた)。 Show notesの「蔵土縁紗夢2ギルティギアシリーズのキャラクター。声がめっちゃうるさい。」は青リロで追体験できる3。今ではSteamがあればGGXXの青リロ版も、また高嶺響が出てくる月華の剣士も手軽にプレイすることができる。数クレ分課金するだけで無限に遊べるとは、1プレイ100円だった時代から考えれば衝撃的だ。 ポッドキャストを聴くだけではなく、実際にゲームにも触れてみることも是非おすすめしたい。

store.steampowered.com

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おわりに

Researchat.fmのゲーム面でのおすすめ回を紹介した。前編では研究、そしてこの中編ではゲームに関連するエピソードを取り上げてきたけれど、しかし実際にはこれらのエピソードが研究とゲームできれいに分かれているわけではない。 実際にエピソードを聴いてもらえるとわかるように、研究の話題の中にゲームの話が交ざっていて、またゲームのストーリーのなかに研究の要素が感じられると思う。 Researchatはこうした研究とゲームの狭間で深い洞察を与えてくれるポッドキャストであり、最後となる後編では両者の重なる領域にあるエピソードを紹介していきたい。■

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