雛形書庫

An Unmoving Arch-Archive

World-Line Intera(ct|x)ion

はじめに

 

以前に聴いたInteraxion Podcastエピソード7*1を先週末に聴き直したらやはり良くて、これは自分でもRebuildの好きな回を語ろうかと思い立った。ただしこれから挙げていくエピソードというのは、いずれもHajime Morita (@omo2009) さんがゲストの放送回となっている:そう、僕のRebuild推しゲストは森田さんなのだ。この記事では雛形的好きなRebuildエピソード3選を紹介したい。順不同で(順位付けは困難だった)エピソード番号の若い順から並べている。

 

 

Aftershow 127: Reading Exercise (omo)

rebuild.fm

 

このエピソードのポイントは終盤に語られている週報の話題。ここでの話に関連してShow Notesでも挙げられている森田さんのMedium記事がある:

bellflower.dodgson.org

 

このエピソードを聴き・記事を読んでとても感銘を受けた2016年当時の僕は、自分でも週報をやってみたいと思い、親しい仲間数人を募って活動を始めた。もう4年も前のことだけど、記事に倣ってメーリングリストから始めた週報はSlackへと場所を移し(Miyagawaさんが言及されている通り、1人1チャンネルのオーナーシップを持つ形態にした)、内容もかっちりとした週報から日常のつぶやきへと形を変えながら今に至る。ここまで続けられているのはひとえに良きメンバーに恵まれたことが大きい。森田さんのMedium記事にある「参加してくれているみなさまには感謝しております。*2とはまさにその通りであって、ただ感謝するばかりである。

 

エピソードで言われているように、ログとして残すことは自分の日々の活動に抱いている感覚的な印象を補正してくれる:「これはすごく良く頑張ったと思ったものが意外とやっていなくて、ダメだったと思ったものが意外にもやっていたりする*3。たまに転けることがあっても、仲間内での軽いpeer pressureによって復帰がしやすい。書いている内容はてんでばらばらでも、何かしらお互いの世界線の干渉があり、それが影響しあってより良い方向に向かえる、というのは素晴らしいことだと思う。それはこの週報に限らず、普段聴いているポッドキャストにおいてもまたしかり。

 

なお気づけばInteraxionエピソード7のゲスト・あらB🌧 (@ark_B) さんもポッドキャストをはじめられていて*4、その初回放送、エピソード1でも週報の様子が紹介されている。Rebuildリスナーがおしなべて週報を始めているのは素敵なこと。

anchor.fm

 

 

169: Your Blog Can Be Generated By Neural Networks (omo)

rebuild.fm

 

エピソードタイトルからは想像できないものの、書籍『達人プログラマー』について語る回。一冊の本をネタに1時間半語り続ける熱量と、その内容もさることながら、エピソードの終わりごろにあったdialogが強く印象に残っている。これに触発された当時の僕は、達人プログラマーを読んだことによる世界線の変動についての記事を書いていた。

本当に言いたいのは、この本の良し悪しではなくて、この本を読んだ人は、あなたが思ったことをどこかに書いてくださいってことなんですよ。

あなたは達人プログラマーを読んで感化されたあと、どういう人生を送ってきたんですかっていう、10年とか5年とか、それが知りたいんですよね。

Rebuild: 169: Your Blog Can Be Generated By Neural Networks (omo)

 

本の内容としては精神論が半分と、もう半分はテクニカルな面での話題、しかし出版からは幾年を経ており、技術的には時代遅れの感は否めない。当時から失われたものはなにか。ウィザードモード、プレーンテキスト、UML、その他諸々。それらが消えていった、そしてそれらに代わる新たな技術が登場してきた背景を考えることは、プログラミングと開発の進歩を追ううえで良いエクササイズになる。

 

ちなみに達人プログラマーの歴史は長くて、洋書が刊行されたのが1999年であり、その後ピアソンより和訳版が出版された(僕が持っているのはこれ)。しかし後にピアソンは日本での出版業務をやめ、版元をオーム社に変えて新装版が出版された(エピソードが収録されたのはこの頃)。そして最近になって20th Anniversary Editionが登場したと思ったら、それを和訳した第2版がつい最近出版されたらしい(僕はまだ読んでいない)。この20th Anniversary Editionについても森田さんの感想記事を読める僥倖がある:

anemone.dodgson.org

 

 

206: Make Ruby Differentiable (omo)

rebuild.fm

 

このエピソードについてはすでにInteraxionエピソード7で紹介されているので繰り返しになるけれど、それでも森田さんの名言が詰まっているので僕からも推しておく。正直なところ、Interaxionでの解説を聴くまではこんなに熱い回だとは気づいていなかった。

 

チャプターでいうと自作言語処理系のところ。打算的になりすぎずに、自分の憧れや格好良いと思うものを追っても良いのでは、という主張が刺さる。それが昨今のような、世の中の仕組みが大きく変わろうとしている状況下ならば尚更だろう。エピソードではTuring Complete FMのパーソナリティであるRuiさんを引き合いに、チャンスをめぐり合わせに備えることの大事さが説かれている(ふとパスツールの言葉を思い出した*5)。

 

自分の憧れや格好良いと思うもの、それがすぐには役に立たなくても、長い目で見たときにリターンをもたらしてくれる、という言葉を信じて、僕も最近は少しだけ頑張るようにした:文章の出力を下げ気味にして、コーディングのほうの出力を上げる。かつてWEB+DB PRESS Vol.100の特集で見かけた『レガシーコード改善ガイド』を読めるようになりたいと憧れ、はや3年を経てもなおリファクタリングの術を身につけたいと願い続ける。なおレガシーコード改善ガイドの底本であるWorking Effectively with Legacy Codeの様子についても森田さんの記事を読める僥倖がある:

bn.dodgson.org

 

 

以上、3選

ここで挙げた以外にもRowkin Mini、Oura Ring*6悪童日記などと、Rebuildを聴いたことによる世界線の変動には事欠かない。そして森田さんとJun Mukai (@jmuk) さんのポッドキャストMisreading Chatでも好きなエピソード3選が出来ると良いのだけれど、それらはまた別の機会にする。Misreading Chatといえば、エピソード86*7を聴いてから僕もFortranの歴史を冷やかすぞと思いながらも、まだ手が出ていない…■

 

History of coarrays and SPMD parallelism in Fortran | Proceedings of the ACM on Programming Languages