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音声メディアの最近の様子 (1)

tl.hateblo.jp

 

『ワンストップPodcast』で、「海外のPodcast番組を探すにはどうする?」というタイトルで、ひとつの項を寄稿させていただいた。そこではPodcastの制作・配信を専門とする法人、たとえばGimletRelay FMを例に挙げて、こうしたプラットフォームを利用することでPodcastを探せます、と書いた。いずれも海外のメディアを取り上げたのは、少なくとも当時の筆者の知る限りにおいては、日本ではこうした音声メディアを配信する法人というものを見つけることができなかったからである。しかし最近では状況は変わりつつあるようだ。

 

たとえば東京のラジオ局J-WAVEが新会社JAVE(他の記事も見ているとJ-WAVEの子会社らしい)を立ち上げてオリジナルのポッドキャスト番組を配信している。『ワンストップPodcast』の記述もアップデートが必要そう。

av.watch.impress.co.jp

 

SPINEAR(スピナー、音だけで聴くとSPINNERかなと思うけれども、綴りが違うので注意)でいくつか番組を聴いてみているけど、個人的には『INNOVATION WORLD ERA』を推したい。J-WAVEで毎週金曜夜に放送されている『INNOVATION WORLD』からの派生番組と思われ、しかし聴いているかぎりでは、両番組にそこまで接点はないような印象を受ける。

川田十夢とTommy(AIアシスタント)の2人がナビゲートする本家INNOVATION WORLDに対して、INNOVATION WORLD ERAは4人のナビゲーターの持ち回りで進む。この記事を書いている時点での最新エピソードはアジカン・後藤が語る、「読書」のメリット

spinear.com

 

このエピソードで語られていて面白いなと感じたのが、読書はどこで中断して、どこでまた読み始めるかが自分の自由にできるという本の特性で、言われてみるとたしかにそうだ。ではなぜそうできるかというと、読書が基本的にはひとりで完結するメディアであるということ、かつそれなりの時間を保ってくれる、ようは孤独の持久力が高いことに由来している。

「誰かが孤独になりたいとしたら、死んだメディアに頼るのがいちばんなの。メディアと、わたしと、ふたりっきり」

とミァハは答えた。あの冷たくなめらかで、ヒトを眠りに誘うような声でさらに続ける。

「映画とか、絵画とか。でも、持久力という点では本がいちばん頑丈よ」

「持久力、って何の」

「孤独の持久力」

――伊藤計劃ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

 

質の高いアウトプットを続けていくうえでは、もちろん他者とのインタラクションも重要なのだけれども、その一方でひとりで沈思黙考する時間、それは本を読むことで促進されるものであり、そうした時間を一流のクリエイターも大切にしているというのは参考になる。

 

あとは読書については、J-WAVETAKRAM RADIOでも最近語られていた。

open.spotify.com

 

番組中で引用されていた "ある人の言葉" がとても好きで、いわく「モノを買うことはできる。けれど、モノはもしかしたらなくなるかもしれないし、奪われたり盗まれたりすることもあるかもしれない。でも、自分が体験したこと・学んだこと・そして食事は、全て盗まれることなく、自分の中での大事な価値として残り続ける」と。

体験や学んだことという観点では、読書もまた盗まれ得ない体験である。どこかで似たような言葉を見たと思って振り返ってみたら、ゲームでの体験もまたそうであるといえよう。

彼らが真剣に戦っていたのは、自分たちにとって唯一のものを、獲得しようとしていたからだ。アーケードの筐体を通じた他者との戦いのなかで、技術を磨きつづけ、ほかの何にも代えがたいもの――誇りを、得ようとしていたからだ。

それは他人から奪うことのできないものであり、また他人が奪うこともできないものである。

――藤田祥平『手を伸ばせ、そしてコマンドを入力しろ (早川書房)

 

最近は本はもとより、ゲームでも物語に触れられていないけれども、しかし少しの隙間時間でこうしてブログを書き・かつての読書の記憶を紐解くことで、小さな旅行を楽しんでいる。そんな感じで本とゲームとポッドキャスト、そしてJ-WAVE推しな最近の様子。■

 

続く:

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